それが「掴み取ったもの」だとわかれば、きっと強くなれる。/キャプテン・マーベル レビュー

 キャプテン・マーベル、劇場で観てきた。

ぶっちゃけアベンジャーズの中ではほぼ唯一の「インフィニティ・ウォーとエンドゲーム間のつなぎ」だった、という理由だけで劇場鑑賞を決めた訳なんだけど、嬉しいメッセージが入っていたのでブログに書こうと思う。ネタバレは当然のようにします。

 

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マーベル版「呪いを解く」物語

 

これは「呪い」を解く物語――

 

その始まり――「呪い」とはある人に言わせると、自分の遠い先祖の犯した罪から続く穢れと説明する

あるいは――坂上田村麻呂が行った夷征伐から続いている「恨み」と説明する者もいる

また違う解釈だと 人類が誕生し物事のをはっきり区別したときにその間に生まれる「摩擦」と説明する者もいる

だが とにかくいずれの事だが「呪い」は解かなくてはならない

さもなくば「呪い」に負けてしまうか…

 

 「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ「ジョジョリオン」冒頭の文章。

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主人公の東方定助は記憶を失った状態から「惹かれあって」やってくる刺客たちと戦い、その過酷な生い立ちに気づいていく。それは「自分は誰かと誰かの融合体で、本当の自分は自分の半分。そしてその部分は死んでいて、今の自分は誰かから生まれたとか、ルーツのあるものではない」というものだった。それを悟った主人公の定助は、作中唯一と言ってもいいほど強烈に取り乱す。

 

 

 

今作は、主観だけどこれにすごく流れが近い。

クリー星の戦士だったはずのヴァースは、混沌とした状況と混濁した記憶の中で、「スプリーム・インテリジェンス」に与えられた力の根源と、自らにとっての正義だったはずのクリー星人の邪悪に気付き、絶望してしまう。(ここまでがいわゆる「呪い」を明らかにするシーン)だが、旧友のマリアから自分を自分だと再認識する言葉をかけられ、そしてクリー星人との戦いに挑む(「呪いを解く」シーン)。

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「記憶を失った主人公が自分の邪悪さに徐々に痕跡から気付き、絶望する」という筋書きは、昔「メメント」で追体験できるものに近いけれど、「キャプテン・マーベル」の中では自分の存在そのものがガラリと180度、そして360度と、変わる体験ができる。

・銀河を救うヒーロー→侵略者→そして再び本当のヒーローへ

・(スプリーム・インテリジェンスから)与えられた力→(マー・ベルから)受け継いだ力→自分で掴み取った力

 

MCU10周年にして初の女性ヒーロー単独作品とかMCU最強の戦士のオリジンとか若き日のニック・フューリーとの掛け合いがかわいいとかエンドゲームの伏線がどうとか、正直あんま関係ない。

 

自分自身に気づくこと、正しく認識すること、そうすることで自分を信じ、強くなれること

 

それをビジュアル的な力強さで、伝えてくれたことが何よりの嬉しさで、楽しさだったことを誰かに共感してほしい。

 

与えられた力で戦う愚かさ、無力さを説くシュプリーム・インテリジェンス。失敗を笑う聴衆、敵、敵、敵。

宇宙人とか別に関係なく、キャロルの今までの体験の中で、彼女の失敗、無力さ・無謀さを浅はかにも笑う人々の顔が描かれていく。

でも、彼女は悟る。「与えられたんじゃない、勝ち取ったんだ」と。その瞬間身体は熱を放ち、瞳は輝く。

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もしかしたら与えられたものかもしれない、偶然の産物かもしれない。でも、それを掴み取ったのは、他ならない自分だ。 そう考えれば、強烈なパワーとスピードで、戦える。コントロールだって思いのままだ。

 

そうなったらこっちのもんだ。いつだって実は誰だってそうだし、そう思う回数が多い奴の方が圧倒的に強い。原体験の全ては、そうして結びつく。

 

そうして彼女は最強のヒーローになった。宇宙だって思いのままだ。「呪い」だって「ギフト」に変えた。いや「ギフト」というより「ボーナス」の方が近いか。

 

 

 つまんねえ運命論だとか、自信のなさとか、そんなんケほども意味がねえや。全部責任も権利も自分が掴んだもんだ。きっと生まれた時から。

 

そんな風に思えた、素敵なヒーローオリジンでした。

 

 

 

 メッセージと違ってたらごめんなさい。あとエンドロールの赤と青の対比がとっても綺麗だった。